田村泰次郎による同名小説の5度目の映画化だが、さすがは東映映画として成立した人間群像劇になっている。それは脚本が「吉原炎上」や「新仁義なき戦い」などの 脚本構成を担った笠原和夫のおかげだろう。
そして燃え上がるような迫力の演出が五社英雄監督だからだ。
太平洋戦争終戦後の占領下にある東京を舞台に、娼婦として生きるエネルギッシュな女たちを描く。
かたせ梨乃や西川峰子ら、女優たちの華麗な脱ぎっぷり。大胆な濡れ場も多く、五社英雄が仕掛けた女同士の争いと男女の絡みシーンが大変話題となった。
終戦から2年経った昭和22年、浅田せん(かたせ梨乃)と仲間たちは 娼婦として 生活の苦境に勝つために 新橋界隈でグループ「関東一家」を形成していた。
せんのライバルお澄(名取裕子)率いるグループや、闇市のボスであるやくざの袴田組との衝突と争いは絶えない。
それぞれに戦後を歩んでいく彼女たちの行く先とは…。
これは、戦う女たちと凄絶なドラマである。
出演者は ほかに渡瀬恒彦 芦田伸介 芦川よしみ 長谷直美 クロード・チアリ 山吹千里 加納みゆき 松居一代 マッハ文朱
光石研。
五社英雄は東映では『鬼龍院花子の生涯』でドル箱監督になるまでは
「五社にかかったら何をされるか分からない。間違いなく脱がされるだけ」
女優たちの間で敬遠されていた。
本作でも女優のヌードは勿論、今日では コンプライアンス違反にあたると見られる危険な撮影が行われた。
壮絶なリンチシーンは出演者たちが 思いっ切り殴り蹴りに耐えた。
巨大な不発弾の爆発シーンでは爆風西川峰子の顔全体が激しく振動。実は この場面は 西川の顔の近くで水素ボンベを噴射させたもので、これにより西川は一時精神的な打撃で動けなかったという。
また、マッハ文朱扮するビッグママお京が通り過ぎた直後に丸太小屋が崩れ落ちるシーンを撮影中、手違いでマッハの頭に3メートルはある 丸太ん棒が当たり、その衝撃で 床のコンクリートに頭を強烈に打ち 大怪我、気を失い 緊急入院。
それに加えて かたせ梨乃と名取裕子の互いの腕をロープで繋ぎタイマンのデスマッチをするシーンで、入念なリハーサルの後、五社が
「おい、ドスを本物に取り替えろ」
と指示。事故は免れたものの、棒切れで闘う名取は本当に「刺される!」と その恐怖に トラウマを抱くことになった。
命懸けの俳優陣の芝居を しっかり見ていただきたい。
(新世界東映)